近年、海外でも高い評価を得ることが増えてきた日本のワイン。その中でも定評があるのが、『甲州』という品種のブドウを使った白ワインです。今回は、甲州というブドウが持つ特徴や魅力、おすすめのワインをご紹介します。
甲州ブドウのルーツはヨーロッパ?科学技術で分かったロマン感じる歴史とは
『甲州』というブドウは主に山梨県の甲府盆地東部で栽培されており、ワインの醸造用や生食用として用いられています。その名前から、山梨県の甲州市が発祥の地と思われがちですが、実はDNA鑑定でヨーロッパのヴィティス・ヴィニフェラ種(ヨーロッパのワイン用ブドウ品種の学名)にそのルーツがあることが分かっています。
更に、中国のブドウ品種のDNAも少し混じっていることから、ヨーロッパで生まれたヴィティス・ヴィニフェラ種のブドウが、シルクロードを通じて日本に伝来したのではないかといわれています。
残念ながら正確な記録は残されていませんが、奈良時代に大善寺という寺院を建立した際に甲州らしきブドウの木が発見されたとの伝承や、勝沼の雨宮勘解由説(かげゆ)が山ぶどうと異なる蔓植物が自生しているのを発見し、自宅に持ち帰り栽培したとのが『甲州』だった…という説も伝えられています。
いづれにしても古い歴史を持つことは間違いなく、はるか昔に海を越えて日本にやってきたと考えられます。
そんな『甲州』ブドウは、今ではワインの醸造用に用いることが大半ですが、江戸時代以前は生食用として人々に愛されていました。ワインの原料として使われるようになったのは、明治時代に海外からワインの醸造技術が伝わってからで、最初は生食用として出荷できないブドウを有効活用するためにワイン造りが始まりました。その後、徐々にワイン用としての栽培が盛んになり、今では日本のワイン用ブドウ品種の代表格となりました。
ヨーロッパで生まれたブドウがシルクロードを通って日本に伝わり、様々な形で日本の人々に愛され続け今に至る…と考えると、なんだかロマンを感じませんか?
今は『甲州』がいつ、どのように日本に伝わったのか預かり知ることはできませんが、科学技術の進歩や新たな歴史的発見により、謎が明らかにされる日が来るのかもしれません。
「生産者の個性が出る」甲州ブドウの特徴と魅力とは
さて、そんな長い歴史を持つ『甲州』ですが、一体どんな特徴と魅力を持つブドウなのでしょうか?まずは品種の特徴からご紹介します。
甲州は果粒が大きい白ブドウ品種で、その皮は薄っすらと紫がかっており、一般的な白ブドウよりも皮が肉厚という特徴があります。果肉は優しい果実味と酸味で、ヨーロッパのワイン用ブドウ品種と比べると、糖度が上がりにくいとされています。そのため、ワインに加工する際に補糖をすることが多かったのですが、生産者の工夫により、最近は糖度が高い甲州も収穫できるようになってきました。
甲州の薄紫色の果皮は、抽出の方法、度合いによっては渋みやえぐみが出るため、果皮からどの程度香りの成分を抽出するか…など、生産者によってその工夫は様々です。酸味や果実味といったブドウが元々持つ特徴だけでなく、生産者の工夫やこだわりで多様な味が楽しめることも、甲州の大きな魅力といえるでしょう。
甲州ブドウのいろんな味わいが楽しめる、おすすめワインをご紹介
先ほどご紹介した通り、甲州の生産地は山梨県の甲府盆地東部に集中していますが、西日本や山形県など、一部の地域でも栽培されています。
今回は、島根ワイナリーで製造・販売している、ちょっと“珍しい”ワインをご紹介します。
島根ワイナリー/清酒酵母仕込甲州
日本で飲もう最高のワイン2019(白辛口部門) シルバー賞(専門家)受賞
「清酒酵母仕込甲州」は、甲州種のブドウをワイン酵母ではなく、清酒酵母でじっくり低温発酵させて作っており、岩牡蠣や冷奴、刺身や焼き鳥と相性抜群の「和食に合うワイン」です。清酒酵母で作ったワインは日本初(島根ワイナリー調べ)ですので、ワイン通の方にもおすすめです。
島根ワイナリーでは、「清酒酵母仕込甲州」以外にも甲州ブドウを使ったワインをたくさん販売しているので、飲み比べてみるのも良いですね。オンラインショップでも購入できるので、興味のある方はぜひご覧ください。
島根ワイナリー/縁結スパークリング 甲州 ブリュット
日本ワインコンクール2019 銅賞受賞
今回は、日本が誇るブドウ品種『甲州』についてご紹介させていただきました。ワインというと海外の銘柄やブドウ品種に目が行きがちですが、日本国内でも美味しいワインが沢山作られています。
最近は通信販売で気軽にお取り寄せができるので、旅行気分でご当地ワインを楽しんでみるのも素敵ですね。そしてお気に入りの1本が見つかったら、今度はその土地に旅に行き、ワインとご当地グルメを満喫して…そんな楽しみ方も“アリ”かもしれません。