ワインを飲む前に「デキャンタ」という水差しのようなガラスの容器に移し替える「デキャンタージュ」。某ワイン漫画をご覧になって、「やってみたい!!」と思った方も多いのではないでしょうか?しかし、同時に「どうしてデキャンタージュするの?」という疑問も浮かびますよね。 今回は、そもそもデキャンタージュとは何か、デキャンタージュが必要なワイン、正しいやり方などについてご紹介します。
なぜデキャンタージュが必要なのか?
デキャンタージュをするのは主に二つの理由があります。まず一つ目は、ワインの澱(タンニンやポリフェノール、酒石などが結晶化したもの)がグラスに入らないようにするためです。年代物の赤ワインや熟成された白ワインの中には、澱が含まれているものがあり、グラスに注ぐときにこの澱が入ると風味が崩れてしまううえ、なんだか美味しくなさそうに見えてしまいます。そこで、ワインと澱を分けるために、デキャンタに移し替えるという工程が必要になるのです。
一方、澱がないワインのデキャンタージュは、ワインを空気に触れさせて味わいや香りを引き出すという目的があります。かつては、澱を取り除くために行うことが主流だったデキャンタージュですが、最近はワインをより美味しく味わうため、空気に触れさせる目的で行われるケースが増えてきました。グラスに注いだワインをくるくる回すのも同じ目的ですが、デキャンタージュの方が圧倒的に空気に触れる面積が多くなるため、より早くワインのポテンシャルを引き出すことができます。
デキャンタージュした方が良いワイン、しない方が良いワイン
それでは、デキャンタージュが必要なワインは、どう見極めればよいのでしょうか? 澱を避けるという意味では、ボトルに詰められてから3年以上経っているというのが目安の一つなので、まずはヴィンテージを確認してください。特に、ボルドーのヴィンテージワインは澱を含むものが多いので、グラスに注ぐ前にボトルの中を確認し、必要に応じてデキャンタージュすると良いですね。
しかし、澱を含むワインはすべてデキャンタージュしたほうがいいのかというと、そうではありません。白ワインやスパークリングワイン、ピノ・ノワールのような繊細な香りと味を持つもの、酸味が強い赤ワインはデキャンタージュしない方が良いといわれています。
デキャンタージュとは、先に述べた通り「ワインを空気に触れさせて香りや味を引き出すこと」。年代物でもこれ以上空気に触れさせない方が美味しいというワインは、澱が立たないよう開封する3日以上前からボトルを立てて保存し、静かにグラスに注げば澱が入りにくく、美味しくいただけます。逆に、熟成が足りない若い赤ワインが、デキャンタージュによって美味しくなることもあります。テイスティングしてみて渋みが強すぎたり、香りが弱く感じたら、デキャンタージュすると良いですね。お店で飲むなら、ソムリエに聞いてみましょう。プロのデキャンタージュが目の前で見られるかもしれません。
正しいデキャンタージュとデキャンタの選び方
「ソムリエのようにかっこよくデキャンタージュしてみたい!」という方は多いと思いますが、まずはデキャンタに澱が入らないようにすること、ワインを美味しくいただけるように空気に触れさせることが何より大切です。澱を避けるデキャンタージュの場合は、ボトルの底に澱が沈殿するように前日くらいからワインボトルを立てておきましょう。そして、底にたまった澱が舞い上がらないように静かに栓を抜いて、澱が入らないように気を付けながら、ゆっくりデキャンタにワインを注いでください。このとき、ボトルにろうそくやランプの明かりを当てて、中の澱が見えるようにすれば、澱を避けて注ぐことができます(明るくて中の澱が見える場所なら、ろうそくなどは不要です)。
空気に触れさせるためのデキャンタージュなら、デキャンタの側面にワインが当たるように注ぐと、空気に触れるワインの表面積が大きくなります。デキャンタしたあと、どのくらいの時間を置いておくかについてはワインの特徴や状態、飲む人の好みによって変わってきます。最初のうちは特にこだわらず、ワインの変化を感じながら時間をかけて楽しんでみるのもおすすめです。
レストランで見るデキャンタは、水差しのようなものからカーブを描いたアート作品のようなものまでさまざまです。どれを選んだら良いか分からないと思われるかもしれませんが、実はワインを空気に触れさせることができれば、どんな容器でも問題はありません。ただ、雰囲気もワインの味を左右する大きな要素ですので、自宅でワインを楽しみたい人は、お気に入りのデキャンタを探してみるのも素敵ですね。ワインをより一層美味しく楽しめるデキャンタージュ。ワンランク上のワインライフを楽しみたい方は、ぜひお試しください。
デキャンタージュの効果を体験したいなら、自宅の“アレ”で代用OK!
「デキャンタージュでワインがどんな風に変化するのか試してみたい!」という方に、自宅にあるもので簡単に同様の効果を得られる方法をご紹介します。
まず、お手軽に試せるのが「スワリング」です。ワインを少量グラスに注いで、空気に触れさせるようクルクル回している人を見かけたことはないでしょうか?これがスワリングです。
デキャンタージュに比べるとワインを空気に触れさせる面積が少なくなりますので、味わいの変化は緩やかですが、とてもお手軽で誰でも簡単に試せる方法です。
のんびり、じっくり、ワインの味が少しずつ変わるのを楽しみながら飲みたい時にぴったりですね。
「デキャンタージュの効果をもっと体感したい!」という場合には、ガラス製のボウルと漏斗(ろうと)を使って、デキャンタの効果を再現する方法もあります。
まずワインをボトルからガラスボウルに移し替えます。次に、空になったボトルを安定した場所に置き、漏斗をセットします。この時、ワインがボトルの内側を伝って空気にたくさん触れるよう、漏斗を斜めに差し込むのがポイントです。音が立てず、ボトルの内側をワインが静かに流れるよう、少しずつ注いでくださいね。
デキャンタは美しさだけでなく、ワインをより効果的に空気に触れさせるため計算して作られています。今回ご紹介した方法はあくまで代用ですので全く同じ効果とはいきませんが、味わいの変化を感じていただけることでしょう。
最近はお手頃なデキャンタも沢山ありますので、より本格的な味わいの変化を楽しみたい方は、ひとつお手元にあっても良いかもしれません。より充実したワインライフを楽しめますよ!
ワインをより一層美味しく楽しめるデキャンタージュ。一般的には「ソムリエが行う高度なサービス」というイメージが強いですが、今回ご紹介させていただいたように、実は誰でも気軽に行うことができます。
もちろんプロのように極めるには修行が必要ですが、大好きなワインをより美味しく楽しむためのひと手間と捉えて、もっと気軽に試してみてはいかがでしょうか?